慧喜~Trip of the art

キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展

渋谷にあるBunkamura ザ・ミュージアムに行き、
「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」を鑑賞してきました 

18世紀、世界の海の主役は、イギリスとフランスで争われていました。
フランスと覇権争いをしていたイギリスは、更なる領土を求めて、
未知なる南方大陸の探索に乗り出そうとしていました。
その命を受けたのが、英国軍艦の航海長だったジェームズ・クック
クックは、タヒチ島における金星の太陽面通過の観測のためという
表向きの名目で、実際は南方大陸探索の命を受けて、
軍艦エンデバー号を指揮し、1768年に第1回航海に出帆しました
HMBエンデバー号

キャプテン・クックの航海誌というものが、残されています。その始まりの一部分を抜粋・・・
     「1768年 8月26日
     ・・・この日 はじめは疾風、曇天。以後は風弱く、晴天となる。午後2時に出帆して海路に就く。
     乗務員は、士官・水兵・ジェントルマンおよび、その従者を含めて94名、約18ヶ月分の食糧と
     10門の砲架にのせた大砲、8門の旋回砲および十分な弾薬を積み、あらゆる種類の備品、物質を貯蔵した。

                                                             ~クックの航海誌より
エンデバー号には、未開の土地に咲く植物の採集のために、植物学者のジョセフ・バンクス
カメラのない時代であったことから、詳細な記録を素描する画家のシドニー・パーキンソン
金星の観測のため、天文学者のチャールズ・グリーンなど、様々な人物が調査員として乗り込みました。

「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」とは、クック一行の3年に渡る探検航海の中で
タヒチ島を中心としたポリネシアの群島(ソサエティ・アイランズ)、ニュージーランド、オーストラリア、ジャワの
4つの滞在地で採集した植物の素描、(後に銅版画で刷り直され、出版に至った『バンクス花譜集』から)
120点の植物画を展示。
更に、太平洋地域で出会った民族についての資料、航海道具、古地図なども展示。
これらを通して、クックやバンクスたちが未踏の地で体験した驚きや感動など、壮大な探検航海を追体験していける展示会です。

展示された植物画が、画家のシドニー・パーキンソンによって、
緻密にドローイングされたものばかりで驚きました
エンデバー号は、イギリスから南米経由で太平洋に出帆し、初めにタヒチに到着します。
ここでは、植物採取だけでなく、島々で多種の貝なども収集したようです。
海と共に生きる民族は、独自の貝の装飾文化を形成していたようで、
展示品にも、貝で作られた釣り針、擬餌、美しい装飾品などが飾られていました
更にクックの航海誌では、海の民であるポリネシアの人々が、星や鳥、海のうねりや風を  
頼りに、計器を使わずに航海をしていることについても触れています。
たとえば、星が水平線から出現し、没入する地点は決まっており、
それを覚えておいて方位を推定したり、
また、色々な種類の鳥が、陸からどれくらいの距離を飛ぶか航海師は知っているため、
自分が今、島からどれくらいの距離にいるかを鳥の種類で知ることができたり、
夕方、鳥が飛んでいく方向で、島の方角を知ることができたりとか、
ポリネシアの伝統的航海術を、クックは航海誌の中で賞賛しています
クリアントゥス・プニケウス
  <クリアントゥス・プニケウス>
      ニュージーランド
続くニュージーランドでは、植物画の他に、先住民マオリ族のカヌーでの戦闘の様子や
装い、身体に施されたタトゥーなど繊細な描写で描き残しています。
展示品には、マオリ族が作った、彫刻品のような戦闘用カヌーや棍棒、槍などがありました。クックやバンクスは、マオリ族を「勇敢で身だしなみが良く、活動的である」と評し、
一行がマオリ族の造形力の高さと、ファッショナブルで洗練された装いに魅了されていた
ことが伺えます
続くオーストラリアでは、西洋人として初めてオーストラリアの先住民であるアボリジニと
接触を持ちますが、これは近代オーストラリアの幕開けとなる歴史的瞬間であったと
いわれています
キャプテン・クックが、「オーストラリア開国の父」として知られている所以ですね
オーストラリアでは、多くの新種の植物が発見されたため、
クックはこの場所をボタニー・ベイ(植物学湾)と名付けました。
『バンクス花譜集』の半数近くを、オーストラリアの植物が占めていることから、
オーストラリアでいかに多くの植物学的発見があったかが分かります
ディレニア・アラータ
   <ディレニア・アラータ>
       オーストラリア
中でも、バンクス自身の名前を冠することになった、バンクシアという植物は、
現在オーストラリアを代表する植物として知られており、《バンクシア・セルラータ》は
『バンクス花譜集』の中でも最も完成度の高い作品の一つであるといわれています→ →

展示されていた植物画には、現在でも色々な病気の治療薬に使われている植物
・・・・・の野生種や近縁種になる植物が描かれていたのも、興味深かったです。
そして、先住民アボリジニは、植物を様々な用途に使っていたようです。
食用や装飾はもちろん、植物からとれる樹脂は、道具を作るときの接着剤として
使われていたり、強い毒性のある植物は、魚採りなどに使われていたのだとか
調査も終盤に掛かった頃、エンデバー号はグレートバリアリーフで座礁してしまいますが、何とか船体を浜に引き上げ、九死に一生を得ます。そして、オーストラリアから帰国途中に船の修繕のため、当時オランダ領であったジャワ島に立ち寄りました。
到着した頃は、ひどく衛生状態が悪く、多くのメンバーが赤痢とマラリアにかかり、
命を落としました。その中には、画家のシドニー・パーキンソンも含まれていました。
船全体が、病院船のような有様になっていたといいます
バンクシア・セルラータ
  <バンクシア・セルラータ>
      オーストラリア

様々な紆余曲折を得て、エンデバー号は、1771年に凱旋帰国。出発時から3年近くの年月が経過していました。
この航海によって得た、おびただしい数の動植物の標本、多数のドローイング、貴重な民族資料は大きな反響を呼びました。
バンクスは帰国後すぐに、パーキンソンの残したドローイングをもとに植物図譜の発行を企画しました。
しかし、バンクス自身の多忙や資金の欠如などにより、バンクスの生前に図譜が発行されることはありませんでした

波乱に満ちた航海から200年以上のちに、大英博物館に保管されていた
バンクスの遺した銅版を用い、
(バンクスが、航海の成果を出版すべく準備していた銅版)
1980年代になって、ようやく出版されたのが『バンクス花譜集』なのだとか。

『バンクス花譜集』の芸術的魅力の他にも、キャプテン・クックが、
地図作りのために航海で使用した測量機器(レプリカ?)も、展示されていたのが興味深かったです。こういう道具を使い、未開の地を測量して、
地図や海図を作ったんだなあ・・・と
西洋の航海術は、様々な科学的機器と共に発展してきたことが分かります。

クックは、かつて、ニューファンドランド島(カナダ東部の島)海域の測量を
命じられ、5年という歳月はかかったものの、
島海域の正確な海図を初めて作成した、という偉業をなし遂げます
この測量を終えた時、クックは、
「これまでの誰よりも遠くへ、それどころか、人間が行ける果てまで
私は行きたい」と記したのだとか・・・
そしてその願いに応えるかのように、その後すぐに命を受けたのが、
『バンクス花譜集』を生み出すこととなった南方大陸探索の冒険なのです
キャプテン・クック探検航海と「バンクス花譜集」展パンフ


「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」は、
来年の3月1日(日)までの公開です
年代的に古くて、歴史のある美術展覧会は、
事前に歴史的な背景などの情報を知っておくことによって、
見方がとても面白くなると思います。(ググっと入り込めます!)   
私は、たまたま時間潰しに立ち寄っただけだったので、
鑑賞した後、ちょっと後悔しました
美術館のチケット代って、決してお安くはないと思うから、
ただ絵画を鑑賞するだけではやっぱもったいない、と思った・・・
bunnkamuraミュージアムカフェ
       ~館内のカフェ、めっちゃ寛げます~

今回の記事を作るにあたり、参考にさせて頂いたサイトなんですけど、詳しく書かれてあって、普通に面白いです
もしこれから観に行かれる方は勿論、そうじゃない方や興味ない方にも、一読おススメです
           ↓ ↓ ↓
未踏の地を追い求めた男 キャプテン・クック

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コメント

慧喜さんの記事を読んで、イングリッシュ・ガーデンという言葉を思い浮かべました。

バンクスと何か関係があるのかなと調べてみたら、彼はキュー植物園を運営し、彼自身と彼が世界各地に派遣したプラント・ハンターのおかげで英国の植物の種類が多様になった、とありました。
英国のガーデニングとキャプテン・クックの航海が繋がった瞬間です。

慧喜さんのブログは、頭のなかに散らばっている乱雑な知識を補完し、体系的に繋げてくれるので好きです。「世界を巡る知的冒険」みたいで、ワクワクします。

Patterson's Houseさん☆

コメント、有難うございます!
私も興味があって、ちょっと調べてみたところ、18世紀以来盛んになった海洋貿易による、発展が大きいとあります!<イングリッシュ・ガーデン
つながりますね^^

更に調べてみたところ、キュー王立植物園では「地球上の植物の約10分の1」が栽培されているらしいです(≧▽≦)
だから、ボタニカルアート(植物画)も盛んだったみたい♪

私も、バンクスのことなど、美術館で鑑賞するまでは全く知りませんでした!
キャプテン・クックに関しても、ハワイ諸島を発見した人?くらいにしか汗
だから、記事作りが自分にとって、本当にいい勉強になります٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

こんにちは。

ご訪問ありがとうございます。

また、心温まるコメントをいただき、感謝いたしております。

さて、キャプテン・クックの船に、画家の方が乗っておられたことは今回初めて知りました。

繊細な植物画に驚きです。

それにしても、パーキンソンは生きて帰ってこれなかったとは・・・

とても貴重な作品ですね。

大川原英智さん☆

訪問&コメント下さり、有難うございます!

パーキンソンの植物画は、近くで見ると、本当に凄いものでした(≧ω≦)
葉脈の一本一本まで、精密に描かれてあって。
18、19世紀の画家の方たちって、秀逸されてますよね!

何でも、船に持ち帰った植物を、パーキンソンが休む暇なく、ドローイングしていたみたいですね^^;

亡くなったとき、まだ26歳という若さだったとか。

無事に国に帰れていたら、賞賛されて、明るい道も開けていたでしょうに・・・。
彼にとってはとても無念だったのではないかと思います(˚ ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )

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慧喜

Author:慧喜
広島県出身 関東住みです。
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