慧喜~Trip of the art

有元利夫展 天空の音楽

群馬県高崎駅近くにある、高崎市美術館に行ってきました。
開催されていたのは「有元利夫展 天空の音楽」です。
事前に頂いていたパンフレット掲載の絵を見て
どうしても本物の絵を間近で観たいと思い、
最終日間近だったこともあり、色々な予定を放り出して、
翌日には電車に飛び乗ってしまいました

「素晴らしい音楽を画面いっぱいに鳴り響かせるー、
いつかそんな作品を作ってみたいものです。」
と、かつて有元利夫さんは願われていたのだとか。
その製作期間はわずか10年。
奇跡のように珠玉の作品を描き、38歳で急逝されました。
高崎市美術館2

有元利夫展 天空の音楽1有元利夫展 天空の音楽2


有元さんは大学在学中から、フレスコ画や日本の仏画などの古典に共通する普遍の美に導かれ、油彩画でも日本画でもない「いい絵」を描くために、
岩絵具や箔などを用いる技法に辿りつかれたのだとか。
長い年月を経て風化したような絵肌には、人物が舞い、花が降りそそぎ、
独特の浮遊感と共に天空の音楽が流れているかのようです

ひとつひとつの絵から、静かな光が放たれてるようで本当に素晴らしいと
思いました。この神々しさはどうやって表現されてるのだろう・・・
絵の前には、ロープが張られてあったので、下半身はロープ外において、
上半身を乗り出し、もはや直角状態で食い入るように見つめていたのですが、
やっぱり分かりませんでした笑
(美術館の方に苦笑顔で注意されてしまいました・・・すみませんでした汗)

岩絵具や箔を用いた独特な表現。
上層の顔料を削ることによって、下層の顔料や下地を表した絵画技法。
背景や空間そのものが、主題になっているような雰囲気の絵肌。
有元さんの絵は、膨大な時間の中に沈んでいるような感覚を受けました。
時間の流れといったものを、絵画で表現するのは難しいと思うのですが・・・
時間に耐え、風化して、それでも「そこに在る」という存在感・・・
花吹
《花吹》(1975年)

春
《春》(1979年)
花降る日
《花降る日》(1977年)

そして有元さんは音楽がとてもお好きだったみたいで、聴くことは勿論、作曲活動もされていたようです
音楽を聴いている時の陶酔感が、「浮遊する」という感覚に結びつき、
それを絵として表現したい時に、そのまま言葉どおりに人間や花を天に昇らせていたのだとか。
音楽を聴いて感じることを、絵を観ても感じることができるような試みをされていたようです
館内には、有元さんの日記なども展示されており、ひとつひとつの珠玉のような言葉が残されていました。

見る側に立った時の『いい絵』ー僕自身が描くものも、
何とかそういう『いい絵』に近づけたいとどこかで強く思っています。
うまく説明できませんが、『造形の原理』とでも呼べるものが
絶対にあるという気がするのです。
それはかなり正確な原理のはずで、
どんな時代にどんな人が作ったものでも、それにのっとっていれば
素晴らしいものとして残れるのではないでしょうか。
そこが、もしかしたら『いい絵』の向かう方向であり帰省する先で、
それは絶対に決まっているんじゃないかというのが、僕の考えです。
時代や風俗を超え、属性をとり払って、造形感覚や質感だけで、
いいものならいいものほど、重なり寄り集まってくる最終的な場所がある、
そんなふうに感じるのです。
だから、自分で描いていても誰かの作品を見ても、
要するにその場所にどのくらい近いかを見ればいいんだという気がする。
それを重い言葉であっさり言えば『普遍性』。
これをそなえているのは、不思議にどこか単純なものなのです。


「 『どうしたらわかってもらえるか?』 と思わないこと。
それだけはハッキリしているようです。
自分を素直に、単純に深く掘って行けばいいんだと思います。
個人の歴史的体験の上にしか何ものもありえないのですから。
大げさみたいだけれど、本当の”通俗”や”普遍”は、
人類の一人である自分の中に必ずあるはずだと思うのです。


ロンド
《ロンド》(1982年)

そして、病を告知されて以降の絵は、その時の有本さんの内面をそのまま表していたかのような絵が続いていました。
38歳という若さで急逝されるのですが、お亡くなりになる前の数年間に残された日記を読んでいると、涙がこみ上げてきました。
一人の夜
《一人の夜》(1982年)

一歩でも深くつかむ事です。
それは考える事です、手によって。


遠くにある理想の姿は見えている。
でも、一歩先が見えないのだ。
そして、遠くはどんどんはっきりして行くし、
足もとは、どんどん暗くなる。
感性を信じて、没入する以外に道はないようだ。


僕には歌があるはずだ。
それは大芸術ではないけれど本物だったはずだ。
気楽ではあったけれど、不まじめではなかった。
小さな楽しみだったはずだ。
自分の身の廻りすべてから吸い取り、
あらゆる連想をはたらかせ、
自分の心の中に入り込んでいけた。

簡単なエスキースを描こう。物語をつむごう。
ささやかな出来事やささやかなキッカケを
大事に大胆につむぐ。
これが明日からの仕事だ。


下画像の青空の絵、特に「雲を創る人」は、跪きたいほど神々しいと思ったのですが、観ていて胸が痛くなりました
雲が佇んでいる空に、心が浮遊する感覚・・・
どこまでも澄んで透明な広がりに満ちる光・・・
天空というものがあるとしたら、本当にこのような世界なのかもしれない・・・とさえ思いました
描かれてある世界はイデアル(想像上)のものだけど、臨場感が感じられるような不思議なリアリティ。
絵に込められた、「彼方」に向かうような眼差し。
体は病に侵されて苦しかったかもしれないけれど、有元さんの心は天空と共にあったのに違いない・・・。
厳格なカノン
《厳格なカノン》(1980年)
雲を創る人
《雲を創る人》(1980年)

有元さんの絵画に圧倒され、全ての絵を鑑賞した後に、何故か打ちひしがれたような気持ちになり、
独自性や自分のオリジナリティといったものを見つけるにはどうすればいいのだろう・・・という思いに改めて駆られました
描いていけば何か見つかるかもしれない・・・という気持ちがあるのですが、
その前に、自分の中に入っている情報や経験値が圧倒的に少ないのだとも思いました
たくさんの「見る・感じる・考える」を、自分の中にインプットしていき、
その中から生まれる僅かなアウトプットこそが、おそらくオリジナリティになるのだと・・・。
今の自分では、一生懸命引き出しを開けてさぐってみても、何も見つからないのは当然なのかもしれないです


そんな気持ちを抱え、高崎駅まで戻ってくると、
電車が来るまで時間があったので、
駅前にある「高崎市タワー美術館」に入ってみました
ビルの中に、美術館が入っているような感じです。
開催されていたのは、「美術でたどる物語」展。
源氏物語や今昔ものがたりなど、長く読み継がれてきた
物語の世界を、たくさんの作家の方が芸術的に表現
こちらの展覧会は、3月22日までの展覧会です。

高崎市タワー美術館2
美術でたどる物語展

そして、売店に立ち寄ってみると、岩絵具などについて書かれたガイドブックを発見して、即購入しました
有元利夫さんが好んで絵に使われた岩絵具について、私は全くといっていいほど知識がなく(というか、見たこともないです汗)
何となく日本画で使われている絵具・・・という認識しかなかったのです
箔について詳しい説明が載っているのも有り難かったです。私は、箔=金箔のことだと漠然と思ってたのですが、
正確には、金・銀・プラチナなどの金属をたたいて薄くのばしたものが箔で、細かく粒子状にしたものは、泥と呼ばれるのだとか。
少しでも知識が増えていくのは嬉しいことだし、このタイムリーな偶然に前向きな気持ちをもらったような感じです
日本画の画材ハンドブック1日本画の画材ハンドブック2


【追記】
後日、fc2ブロガーのchariotさんから、小川美術館・彌生画廊さんでも有元利夫展が開催されていることを伺って、
さっそく行ってきました。再び、有元さんの絵を鑑賞できる
機会に恵まれてラッキーでした
来館者もたくさんいて、有元さんの人気の高さが伺えました
こちらの展覧会は、3月14日(土)までの開催となってます。
無料なのも嬉しいですね
彌生画廊

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コメント

慧喜さん、こんにちは~

きょうのブログで、慧喜さんに描いていただいた似顔絵をアップしました。

こちらにリンクもさせていただいたので、よろしくお願いします!
(*´∀`*)


慧喜さんはいろいろな美術館などに行かれていて、素敵ですね!

わたしも学生のころは課題があって、友人と連れ立って大きな美術館から、無料のギャラリーまでいろいろ行きましたが。

最近はさっぱりですw
最後は去年のオルセー美術館展かな、、、

たまには素敵な絵をながめて、心洗われたいものです、、、
(´ε`;)

choco*さん☆

choco*さん☆


コメント有難うございます!今、覗かせて頂きましたよ~!

キレイに写真を撮って頂いて、感動しました・・・泣
何はともあれ、家族の皆さんに喜んで頂けて良かった!
色鉛筆がほんとに描きやすくて良かったのですよ<スタビロ
✧*。(´。✪ω✪。`)✧*。

choco*さんは、美術学校とかに行かれてたのかな?
<学生の頃の課題

オルセー美術館展、鑑賞されたのですね~^^
私は、あの時行かれなかったので羨ましい限りですよ~(๑˃́ꇴ˂̀๑)

美術館っていいですよね♪売店も楽しいし、
広いカフェとかあると一日中でもいたいです・・・(*´﹃`*)✧*。

コメントありがとうございました。
こちらこそいつも楽しませていただいております。
高崎市の美術館は、5、6年前、谷内六郎さんの展覧会がやっていたので、お邪魔したことあります。
機会があれば、また行きたいです。
  • 2015-03-02 |
  • マウントエレファント #TO/PCoV.
  • URL
  • 編集 ]
  • ▲PageTop

アルパカさん☆

アルパカさん☆

コメント有難うございます!

高崎美術館、いいですよね^^
アットホームな感じで、ゆったり落ち着けました(✿╹◡╹)

谷内六郎さんのことを知らなくて調べてみました。
童話の挿絵みたいで可愛いですね~~!

アルパカさんの漫画、いつも楽しみにしております。
いい意味で、脱力感というか力が抜けるので好きです笑
小説も面白いです~~v(*´∀`*)v

こんばんは。

有元利夫さんは私の好きな画家の一人です。
もっと寿命があったらどのような作品を描いたのだろうかと思います。

毎年、千代田区三番町6-2にある小川美術館・彌生画廊では有元さんの命日に合わせて、この時期に有元利夫展を開いています。
今年は㋂14日(土)までです。

彌生画廊のサイトは以下の通りです。
http://www.yayoigallery.com/current-exhibit/index.html

chariotさん☆

コメント有難うございます!
私は、有元利夫さんのことを存じ上げてなかったのですが、
絵を見て、素人目にも本当に素晴らしいものだということが
分かりました(つもりでいますーー;)

神々しく透明感があり、そして深い絵に圧倒されました・・・(≧ω≦)
有元利夫さんの絵を間近で観れたことは、本当に有り難いことだったと思います。
うまく説明できないのですが、何か言葉にできないものを
掴めたような?そんな展覧会でした。

小川美術館・彌生画廊さんのことを教えて頂いて、有難うございます!
ぜひとも、伺いたいと思います!
そういう情報は、私にとっては貴重なものです。
教えて頂いて、感謝感謝ですっ
(⋈◍>◡<◍)。✧♡

日本人の画家というのは、まったく色々な技法や素材を創り出すものだな、とつくづく感心させられます。それでも、ここまで質感のある深い色合いを出せる人は稀ではないでしょうか。

ずっと以前、藤田嗣治のことを特集した番組を観たことがありますが、彼もやはり独自の技法・素材を創り出していましたね。

すごく話が飛びますが、この記事の次に掲載されている北欧の子供の絵を見て、藤田氏の「綿帽子の子供」を思い出しました。

Patterson's Houseさん☆

Patterson's Houseさん☆

コメント有難うございます!
例によって気付くのが遅れてしまいました汗。

鑑賞していて思ったのですが、いい絵として仕上げていくには
「深み」「重み」「透明感」といった要素がとても大事なのかも・・・
と、思ってしまいました。
これが正解なのかどうかは分からないのですが、
でも、強くそう感じたので、もう自分の中では正解にしてしまおうと
思いました・・・(。>﹏<。)

「綿帽子の子供」検索してみました♪可愛い絵でしたね^^

藤田嗣治さんの記事が、去年の新聞に載っていたので
大事にスクラップしてます笑
記事によると、独特な下地作りの工程の中で、ベビーパウダーに使われる
タルク(滑石粉)をこすりつけて風合いを出されていたのだとか。
藤田嗣治さんのお写真にも、「シッカロール」の缶が写りこんだものが
あるのだそうです~(灬╹ω╹灬)

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慧喜

Author:慧喜
広島県出身 関東住みです。
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関わった全ての皆さんの
お役にたてますように 
(*≧∀≦*)

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