慧喜~Trip of the art

ルーヴル美術館展

東京・六本木にある国立新美術館に行ってきました
「ルーヴル美術館展」が終わりに近づいてたので、
最終日前日に行ったところ、ものすごい人・・・
チケット購入してから、観賞できるまでに結局1時間半くらいかかりました。
「ルーブル美術館展」は、ルーブル美術館の所蔵品から、
厳選された風俗画(日常生活を題材として描かれた絵画)
約80展が集結した展覧会です。
16世紀初頭から19世紀半ばまで、約3世紀半にわたりヨーロッパで、
各国・各時代に活躍した画家たちの珠玉の名画が集結
風俗画を通じて、当時の社会の状況や世相、人々の生活習慣などを
事細かに知ることができ、歴史的にも意義深い風俗画展です。

国立新美術館1
ルーブル美術館展パンフ

たくさんの名画が展示されていましたが、割愛しまくって一部分の作品をご紹介させて頂きます

まずは、ベルギーのアントワープで活躍した画家
クエンティン・マサイス(1466-1530)の「両替商とその妻」→ → →

両替商の夫が、天秤に金貨をのせて重さを測っているのを、
横で、聖母子の絵の描かれた時祷書(じとうしょ)を読んでいた妻が、
ふと手を止めて夫の手先を見つめています。

両替商は、16世紀当時、商業都市として繁栄していたアントワープに
台頭しつつあった職業だったのだそう。
この絵の最初の額縁には、作者によって
「汝ら秤においても升においても不義をなすべからず」(レビ記19章)
という聖句が刻まれていたそうで、
当時、新しい職業であった銀行家や両替商に対する倫理観を戒告した絵だと言われています。
欲深く金を稼ごうとする夫に、信心に根差した正しい商いをするように
目を配る妻・・・という構図なのでしょうか
両替商とその妻
クェンティン・マセイス≪両替商とその妻≫1514年


イタリアの画家ティツィアーノ・ヴェッチェリオ(1488・90-1576)の
「鏡の前の女」→ → →

16世紀当時、ヴェネツィアでは美しく官能的な女性を描いた
美人画が流行していました
当時は、金色に輝く豊かな髪や大理石のように白い肌などが
女性の美の条件として、詩などで盛んに歌われました。
美人画の流行は、詩や彫刻など異なる芸術分野の優劣を競う
比較論争とも結びついており、
「二次元の絵画に比べて、人物を後ろからも見られる三次元の彫刻が優位である」という意見に対して、
ティツィアーノは、絵画によって理想の女性美を示そうと描いたのが
この作品なのだとか。
後ろ姿も見えるように「鏡を使った画」を描いて、
詩や彫刻にはない絵画の優位を主張する工夫もなされています
鏡の前の女
ティツィアーノ・ヴェッチェリオ≪鏡の前の女≫
1515年頃

フランドル地方出身で、イタリアで活躍した
ニコラ・レニエ(1591-1667)の「女占い師」→ → →

二人の褐色の肌の「ロマ人」の女が結託しており、
そのうちの若い方が「女占い師」として、
色の白い娘の手相を読むふりをしています。
そして、老婆の方は娘のポケットから
財布を抜き取ろうとしています。
女占い師と老婆は結託した泥棒仲間なのです
さらに占い師の背後にいる男が、
占い師の上前をはねるように鶏を盗んでいます。
この絵には、占い師を信ずるとすべてを失ってしまうという教訓的意味が含まれている他、
騙されることへの注意、騙すものもまた騙されるという、
二重の警告が描かれているとも云われています。
当時、占い師といえば詐欺の代名詞だったようで、
このような詐欺の警鐘を鳴らす作品が
たくさん描かれたのだそうです
女占い師
ニコラ・レニエ≪女占い師≫1626年頃


「チェス盤のある静物」は、17世紀のフランスの画家リュバン・ボージャン(1612-1663)の代表的な作品。
一見、色んなものを集めた静物画に見えるのですが、人間の五感識を表したものなのだそうです。
手前にあるリュートと楽譜は聴覚。 トランプ、巾着袋、チェス盤は触覚。 パンとワインは味覚。 花は臭覚。
そして鏡は視覚を象徴しているのだとか

しかし一方では、宗教画の役割を果たしている静物画とも言われており、
リュートや楽譜は音楽で、恋や官能の象徴。
巾着は、お金を入れる袋。
トランプやチェス盤などの賭け事は、
キリスト教に対する堕落。
ワインとパンはイエス・キリストの象徴(血と肉)。
花はこの世のはかなさを表し、
何も写っていない鏡は、はかない「生」の後に
待ち受ける「死」を表している・・・
という説もあるようです。
キリスト教の敬虔な教え(生)と
様々な誘惑に満ちた世界(死)と
二つの世界を暗示させているかのようで、
静物画だけど、風俗画でもあり宗教画ともいえるような
不思議な作品です
チェス盤のある静物
リュバン・ボージャン≪チェス盤のある静物≫17世紀前半

フランスの画家ジャン=バティスト・クルーズ(1725-1805)の
「割れた水瓶」→ → →

少女の着ている純白のドレスは乱れており、
手には、割れた水瓶としおれた野薔薇を持っています。
白いドレスは「純潔」を意味し、水瓶は子宮のシンボルであることから
この絵は、処女性の喪失を表しているといわれています。
物語性の強い感傷的な風俗画ですが、
贅沢で怠惰な貴族の生活を表しているともいわれ、
市民階級に向けた、軽率さへの注意を促す教訓的絵画
とも云われています。
この絵画は、ルイ15世の寵妃となったたデュ・バリー伯爵夫人が、
フランス革命で斬首刑に処されるまで所有していたことから、
若い時の彼女がこの「割れた水瓶」のモデルだったという説も
あるのだとか
割れた水瓶
ジャン=ベテイスト・クルーズ≪割れた水瓶≫1771年

17世紀スペイン・バロック絵画の巨匠、
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1617-1682)の
「物乞いの少年(蚤をとる少年)」→ → →

廃屋らしき建物の片隅で、無心に蚤を取る少年の姿が描かれてます。
足許には、食べ残した海老やリンゴが転がっていて、
水がたっぷり入っていそうな水瓶も置いてあることから、
貧しくとも平和な日々を過ごしている少年の生活が感じられます。
そして、窓から差し込む暖かな光が、少年を柔らかく包んでいるようで、
みずぼらしい衣服の割りに、悲壮な感じはしません
ムリーリョは、聖母や子供達をテーマに、作品を数多く描きましたが、
とりわけ、下層社会の子供を暖かい眼差しで、描き出しました。
少年を照らす光は、不幸な境遇を演出するためのものでなく、
神のあわれみと慈悲があってほしいという、
彼の温かみのある願いから描かれたものであると云われています。
物乞いの少年(蚤をとる少年)
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
≪物乞いの少年(蚤をとる少年)≫1647-48年頃

ムリーリョの子供たちに対する温かい眼差しは、彼の幼いころの経験が影響しているといわれています。
1617年にスペイン南部のセヴィリアに生まれたムリーリョは、9歳の時に両親を亡くし、一時孤児となりました。
4年後に親戚の家に引きとられますが、当時の孤独な生活が、彼の精神形成に大きく影響を及ぼしたとも云われています。
1646年、28歳の時に、画家としてデビューします。前年には、結婚し子宝にも恵まれましたが、
1649年、セヴィリアでペストが大流行し、妻と子供を失い、再び孤独生活を強いられます。
このペストで、多くの人が亡くなり孤児たちが街にあふれていたそうです。
ムリョーリョは、過去の自分や孤独な経験と重ね合わせて、孤児たちを温かい眼差しで見つめていたに違いありません

最後に、今回のルーブル美術館展の目玉ともいえる
17世紀オランダを代表する画家フェルメール(1632-1675)の
「天文学者」 → → →

ルーヴル美術館に所蔵されるフェルメール作品は、
2009年に来日を果たした「レースを編む女」と
今回が初来日の「天文学者」の2点しかないのだとか。
そのため、「天文学者」はルーヴルを離れることが殆どない
作品の一つなのだそうです。
絵の中の天文学者が、着物みたいな衣装を身につけていますが、
当時、実際にオランダでは、着物を模した「日本の上着」と呼ばれる
ガウンが知識人や上流階級の間で流行していました。
フェルメールがこの作品を描いた1668年頃の日本では、
徳川幕府の鎖国令によって外国との貿易を禁止されていましたが、
唯一、長崎の出島では、オランダ商船との交易が盛んだったため、
その時に着物が海を渡ったのではないかと云われています。
天文学者
ヨハネス・フェルメール≪天文学者≫1668年

この「天文学者」は、第二次世界大戦中に、ヒトラー率いるナチス・ドイツの手に渡るという数奇な運命をたどった作品なのだとか。

当時、若い頃画家への夢を絶たれたヒトラーは、故郷にヨーロッパ美術を集めた壮大な美術館を建造することを夢見ていました。
そして、1940年のフランス侵攻の際に、ナチスはユダヤ系フランス人の銀行家、エドゥアール・ド・ロートシルトが所有していた
「天文学者」を、力ずくで押収しました
このため「天文学者」の裏面には、「第三帝国所有」を表す鉤十字の印が、黒いインクで刻印されているのだとか。
第二次世界大戦終結後に「天文学者」はロートシルト家に返還され、相続税の一部としてフランス政府の持ち主となり、
ルーヴル美術館の所蔵となったのだそうです。
歴史の戦火の中をかいくぐってきた「天文学者」を、直接目にできた経験は本当に貴重なものでした・・・
ただ、人が多くてゆっくり観賞できなかったのが残念・・・。多少無理しても平日に時間をとって行った方が良かったかも・・・

国立新美術館の展示は、6月1日で終了しましたが、
次回は、京都市美術館にて、2015年6月16日(火)から9月27日(日)まで巡回展が開催されるとのことです


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コメント

慧喜さん、こんばんは。

こちらこそ訪問&コメントありがとうございます。
熱心に勉強なされていますね~!!

今後ともよろしくお願いいたします。

take-projectさん☆

take-projectさん☆

コメント有難うございます!

色んなサイトや記事を見て、
私自身、記事を作りながら勉強してる感じです笑
詳しい専門家のような方々がたくさんいて、
その博識ぶりには驚きます><

カープ記事、いつも取り上げて下さって
嬉しいです^^
何とかこれから盛り上がっていってほしい・・・

╭(๑•̀ㅂ•́)و

絵の見方が深まります

慧喜さま、こんにちは。今日は国立新美術館ですね!!

慧喜さんの解説で、それぞれの絵の情景や画家の意図が良く分かり、
画家の思いが何処にあり、何が絵に潜んでいるのか?
鑑賞する側の絵の見方が深まります。

今日も、しっかり堪能させて頂きました。
これだけの記事を読ませて頂き何時も安上がりで、
楽しい美術館巡りをさせて頂き感謝で~す。
慧喜さんの労力に敬服してコメ終ります。次を楽しみにしてま~す。

mnsuisai さん☆

mnsuisai さん☆

コメント有難うございます!

記事のことに触れて頂いて感謝です・・・><
毎回、ほとんど予備知識なく美術館に足を運ぶといった感じなので、
記事を作る際、色々と調べてますと
様々な歴史的背景や当時の世相、
画家たちの個人史?などを知ることができ、
私自身も本当に勉強になるのです~♪

こちらこそ読んで頂いて有難うございます!
なかなか、次回記事を更新できなくてごめんなさい:;
今、次回に出品する公募展に向けて、製作の方に
かかりっぱなしになってますーー;
何とか、ブログ更新のほうも頑張ります~!
また訪問して頂けると嬉しいです☆

。・゚・(ノ∀`)・゚・。

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慧喜

Author:慧喜
広島県出身 関東住みです。
アートに関すること
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自分が感じたことを
アップしていきます。
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関わった全ての皆さんの
お役にたてますように 
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