慧喜~Trip of the art

マグリット展

東京・六本木の国立新美術館にて、
前回記事の「ルーブル美術館展」を観賞した後に、
同館で開催されている「マグリット展」を観に行きました
ルーブルの方は、すごい人混みでしたが、
マグリット展の方は、すでに夕方にさしかかっていたためか、
比較的ゆっくり観賞できました
ルネ・マグリット(1898-1967)は、
ベルギー出身の20世紀を代表する画家です。
ジョルジョ・デ・キリコの影響でシュルレアリスムに開眼し、
やがて、独自の画風を確立していきました。

シュルレアリスムとは、1924年にパリで始まった前衛運動のことです。
フロイトの精神分析を導入し、無意識における心象風景を捉えることに
重きを置いたシュルレアリスムは、1930年代の文化を主導しました。

無意識の中に潜んでいるとされた「現実」を超えた概念、
「超-現実」に触れようとするシュルレアリスムの主張は、
芸術の分野で広く展開していきました。
絵画においても、夢や無意識の世界を描き出そうとするものでした
(簡単に言えば、無意識の世界にこそ芸術的創造性があると
考えられていたのです)
マグリット展パンフ

しかし、マグリットは自身の絵を、「目に見える思考」であり、
世界が本来持っている神秘をイメージとして提示したものである、と表現しました。
この点が、夢や無意識の世界を描き出そうとした他のシュルレアリスムとは異なっています

恋人たち
≪恋人たち≫1928年
野の鍵
≪野の鍵≫1936年
「恋人たち」という有名な作品です
画面上で、二人の男女がキスをしていますが、顔は布で覆われていて、その表情を窺い知ることができません。
観る人によって、色々な解釈や感想が出てきそうな絵です

マグリットは、13歳の時に母親が入水自殺をするという悲劇に見舞われました。
引き上げられた母親の遺体の顔は、濡れたナイトガウンにぺったりと覆われていたのだとか・・・
マグリットが、人物の顔を隠した絵をよく描いているのは、そのイメージに影響しているとも云われていますが、
彼が愛読していた探偵小説の中に、布で覆われた遺体の表現があり、それに影響されたという話もあります。

しかしながら、彼の作品に表れている、日常的体験の中に潜む矛盾や不条理といったイメージは、
幼い頃のこのショッキングな出来事と関係があるのかもしれない・・・とも云われています。

陵辱
≪陵辱≫1934年
ゴルコンダ
≪ゴルコンダ≫1953年

山高帽の紳士が何人も空中に浮かんでいる「ゴルコンダ」という作品 ↑
山高帽の紳士は「普通の目立たない人」の象徴であり、マグリットの自画像ではないか・・・とも云われています。 
ゴルコンダというのは南インドにあった都市で、ダイヤモンドの産地として知られた幻の都のような都市のことなのだそうです
絵の内容とタイトルの関係性、これもまた色々な解釈ができそうです。(グラフィックアートみたいで、私は結構好きです)

実生活のマグリットは、山高帽の紳士の如く、目立つのを嫌う普通の人だったようです。
彼は、画家として名前が売れても、普段はまじめな銀行員として働き、常にスーツにネクタイ姿で絵を描いていたのだとか。
それらしいアトリエもかまえず、台所の片隅にイーゼルを立てて制作していたといいます。
制作は手際がよく、服を汚したり床に絵具をこぼしたりすることは決してなかったとも。
待ち合わせの時間には遅れずに現われ、夜10時には就寝するという規則正しい生活。
銀行員のかたわら、広告デザインなどの仕事もしながら、幼馴染の妻と犬と慎ましく平穏な生活を送りました。

マグリット作品に表れている、彼の中の混沌としたイメージ(調和と不和、矛盾、不条理感)は、
この日常的な偏狭さによってバランスが保たれていたのかもしれない・・・とかって思ってしまいました

光の帝国Ⅱ
≪光の帝国Ⅱ≫1950年
白紙委任状
≪白紙委任状≫1965年

「光の帝国Ⅱ」は、マグリットの代表作品の一つで、昼と夜が同居した作品です。マグリットは、この作品について
「風景は夜を起想させ、空は昼を起想させる。昼と夜のこの共存が、私たちを驚かせ魅惑する力をもつのだと思われる。
この力を、私は詩と呼ぶのだ」と述べています

昼と夜が同居する絵は、とても評判が良かったらしく、マグリットは、同じテーマで絵を何点か制作しています。
展示されていた「光の帝国Ⅱ」は、「光の帝国」シリーズの二作目にあたり、世界的に人気ある作品です。
彼が亡くなった時にも、「光の帝国」のバリエーションと思われる未完の絵が遺されていました。
有名なホラー映画「エクソシスト」にも、この「光の帝国」から着想を得たとされるシーンが登場するのだとか

絵の意味を不明確にするようなタイトルが多いのも、
マグリット作品の特徴ですが、この「大家族」もそうですね。→ →
束の間の青空に見える平和・・・といった意味なのでしょうか?

マグリットの絵画は、
まだまだ面白い作品がたくさんあるのですが、
その殆どが、現実にはありえない不条理な情景が描かれています。
日常的なものや情景を不思議な配置やイメージで結合させたり、
見慣れたものを見慣れないものに変えることで、
観るものを混乱させるかのようです。
が、イメージの異質な結合の中には、詩的な趣きも感じられて、
不条理感満載でありながら魅きつけられるものがあります

マグリットは、
「真に詩的なキャンヴァスは、真昼間の夢である」
という言葉を残していますが、
マグリットらしい素敵な言葉ですよね・・・
大家族
≪大家族≫1963年

「私たちの思考は見えるものと見えないものの両方があることを知覚している。
思考を目に見えるものにするために私は絵を利用する」
というマグリットの言葉も残されていて、パッと聞いただけでは正直よく意味が分からなかったのですが、
意識(見えるもの)と無意識(見えないもの)に言葉を置き換えてみると、いいのかな~?と思います・・・多分

まず、現実に存在する物をモチーフにすることで意識に働きかけ、更に無意識が捉える感銘や真実、無意識が理解できる絵、
そういったものをマグリットは描き出したのではないか・・・と私は思います。
マグリットの絵が、何か心にひっかかり印象に残るのは、
彼の絵を、視覚だけではなく、人間本来の意識の奥に潜むものが感受しているから・・・??とかって思ったりしました

いずれにしても、
現実をモチーフにして淡々と描いた中に、マグリットの強烈なイメージの世界が広がっていて非常に面白かったです

国立新美術館では、2015年6月29日(日)までの開催となります。
その後は、7月11日(土)から10月12日(月・祝)のまでの期間、京都市美術館にも巡回予定とのことです


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コメント

わぉ!!マグリット!!

6月29日までやってるんですね♪

私、なんでかはよく分からないんですが、マグリットの絵に魅かれます♪

日常では見る事の出来そうもないこの不思議な発想。

>「真に詩的なキャンヴァスは、真昼間の夢である」

このマグリットの言葉は、この『世界』と私たちという『存在』の事なのかもなぁなんて思いました(*^^*)

う~ん、今回はなんだか『行こう!!』って思えないので、パスすると思いますが、こうして見られてよかったです♪

記事にしてくださってありがとうございますヽ(^o^)丿

真知子さん☆

早速コメント有難うございます!

<6月29日まで
<そうそう♪今回は記事作り、間に合いました^^;

<なんでかはよく分からないんですが、マグリットの絵に魅かれます
<私もそうです!
意識の奥、無意識の部分で反応したり共感するものがあると思うんですよ・・・
だから、魅かれる理由に説明がつけられないというか・・・笑

<「真に詩的なキャンヴァスは、真昼間の夢である」
この言葉いいですよね!
マグリット作品の世界を、端的に一番表してる言葉だと思います^^

<こうして見られてよかったです♪
<そう言って頂けると嬉しいです><
本当はもっとコアな作品もあったんですけど、
とりあえず、代表的な作品をアップさせて頂きました^^;
読んで頂いて、有難うございます!


,。・:*:・゜’(❀ฺ´∀`❀ฺ)ノ。・:*:・゜’

マグリット!

マグリット・・・・
観たいです。
29日までか。
ウウウウム・・・・行き・・・・たいぞ!

でも、えきちゃん、相変わらずあちこちと
観に行ってるのねぇ。
スゴイ事だねぇ。
  • 2015-06-14 |
  • マルボーズ隊員(タカダカズヤ) #.Oqi5Drk
  • URL
  • 編集 ]
  • ▲PageTop

マル坊カズヤさん☆

コメント有難うございます!

マグリット展、よかったですょ・・・!
もし、行かれるのなら音声ガイドを借りて
聞きながら鑑賞するのがオススメです♪
作品のキャプションが何せ分かりづらくて・・・笑

<相変わらずあちこちと
<まだまだ行き足りてないですよ~><
都内の美術館もまだ行ってないとこたくさんあるし、
もっと地方の方まで足を伸ばしたいし・・・

直近で行ってみたい展覧会のパンフを
部屋に10枚くらい貼っとくんですけど、
結局行けるのは、一つか二つくらいです・・・--;

。・゜・(。´ノω・`)。ウウゥゥ

こんばんは~(^^)

マグリット、好きです~。
展覧会、行かれたんですね! 羨まし~。

昔、私が20代の頃、熊本県立美術館でマグリット展が開催された時に
1度観に行ったことはあるんですが、
今回の東京の展覧会には、その時とはまた違う作品群が出展されていて
とても興味深いですね~。
いつもながら詳細な記事、有難いです!

マグリットは絵画テクニックがどうの、という作家ではないですよね。
その魅力は何といっても、画面に描かれている不思議な世界。
現実に裂け目を生じさせて、違う世界を見せてくれるような、
そういう所が見ていて快感です。
「ゴルコンダ」良いなぁ~。壁に飾りたい(笑)。

文伽さん☆

文伽さん☆

コメント有難うございます!

<熊本県立美術館でマグリット展
<マグリット展観に行かれてたんですね!
マグリット作品って数が多いみたいなので、
その都度、展示内容も変わるのかな・・・?

<絵画テクニックがどうの、という作家ではない
<そうですよね!技法よりも、
マグリットさんの強烈なイメージが全て、みたいな笑

現実と不現実の世界が描かれてるんだけども、
不現実の世界に、真実を感じてしまうような不思議さがあります^^;

ゴルコンダ、いいですよね♪
マグリットって、広告デザイナーでもあったので、
こういうポップな絵が、得意だったのかも?

熊本県立美術館、気になって調べてみたところ、
今、「藤田嗣治とフランスの画家たち」の展覧会やってる~!
いいなぁ・・・><

☆:*・゚(●´∀`●):*・゚☆

私が悩み思うところ

慧喜さま、こんにちは。
今日のお勉強・・・見えるもの見えないもの・・・ですね!!
リアリズムの見えるもの(写実)とシュルレアリスムの見えないもの(心象)

『見ている時は現在でも、それを写し取る時には既に過去の時であって、
描いているものは、それは見たときの自分の「記憶」である!!』
これは自分の言葉に置き換えていますが、こんなことを聞いた事が有ります。
なので絵を描く上で、見えたもの(過去を写す記憶力)と、脳が記憶している
見えないもの(創造・感性)で成り立っていると思います?

写し取るデッサンが出来ても感性が乏しく物語が創れない人の絵・・・
それが今の私が悩み思うところです(泣)画家にならなくてよかったと!!

ところで、日美は賞が取れましたか?次の公募展順調ですか?

mnsuisai さん☆

mnsuisai さん☆

こちらの記事にもコメント有難うございます!!

<見えるもの見えないもの
<マグリットの絵画って、
まさに、見えるもの見えないもの・・・ということが、
非常に重要なテーマだったと思います!

<見ている時は現在でも、それを写し取る時には既に過去の時であって、
描いているものは、それは見たときの自分の「記憶」である
<そうですね^^たとえ、写真を見ながら描いたとしても、
一度、自分の中にとりこんでから描く方は多いと思います。

<写し取るデッサンが出来ても感性が乏しく物語が創れない人の絵
<しかし、mnsuisai さんのお描きになるものは、
とても技術が高くてスゴイと思いますよ!
慧喜にとっては、まずデッサンが確実なことが重要だし、
自分もそこを目指したいと思ってます。

日美展、次次回くらいにアップさせて頂ければ・・・と思います!
心配して頂いて、有難うございます!
次回公募展に関しては、今、試行錯誤しながら頑張ってます笑

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慧喜

Author:慧喜
広島県出身 関東住みです。
アートに関すること
アーティスティックな世界に触れて
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関わった全ての皆さんの
お役にたてますように 
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